2022年6月1日
木曜日
はれ
終日在宅。
今年の春は短かったような気がする。寒い冬に呼吸困難でつらい思いをしたので、春に有り難さを感じた。呼吸困難のつらさというのはやがて消える痛さとは別のものであって、人間を臆病にする。
そして、今日から夏。
この詩を愛し優しと思っても、書き写すのは今年が最後かもしれないなとふと思った。
//
相 聞
芥 川 龍 之 介また立ちかへる水無月の
歎きを誰にかたるべき。
沙羅のみづ枝に花さけば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。
//
荻原映雱氏の著書「季語鑒賞 あきた歳時記増補改訂版」から夏の部の季語をのっけて行ってみようかとふと思った。
//
/*夏*/冷夏(れいか) †
梅雨寒・梅雨冷えは古い歳時記にもあるが、冷夏はまだ新聞用語の段階だろうか。
通常の夏には十目を越す真夏日もあるのに、用意しておいた扇風機さえほとんど使われず、電器屋の冷房器具がさばけない夏は、山間には青立ちのままの痩せ稲が目立ち、それを苦にして自殺する農民もあった。
昭和八・九年ごろ、東北北部が冷害に襲われ、激甚地青森県の農夫が雪降りの十三湖で、糧とする水生値物の地下茎を求めている写真が新聞に載せられたことを思い出す。食糧基地東北を救えーという全国の善意が衣料となり、塩蔵食品となって、同じ冷害県秋田の学童にまで届けられたことを知っている人も今となっては数少ないことであろう。
減反が国民を餓死へ追いやる冷夏となることはよもやあるまいが。
楽団が冷夏の村を素通りす 小林風子
マネキンの向きそれぞれに冷夏果つ 宮本秀峰
冷夏この立木に結ぶ魔除けの符 荻原映雱
遠目して同根となる冷夏の田 柳川大亀
またぐらをびょうびょうと吹く冷害田 同
(荻原映雱氏の著書「季語鑒賞 あきた歳時記増補改訂版」から)
//