忘れたことさえ忘れたとき

2020年3月17日
火曜日
くもり

 午前10時すぎサティへ。
 本屋で待っているうち喉の調子が悪く、駐車場で家人を待つ。
 帰宅して痰取り。やうやく楽になる。

 頭の中で「忘れたことさえ忘れたとき」というフレーズが離れない。
 昨日、ベッドで嫌なことばかり思い出したせいか?
 たしか中原中也の詩にあつたと思って調べてみたら、なんと立原道造の「 萱草に寄す」の中にあつた。
 「忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには」といふのがそのフレーズ。

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 のちのおもひに


夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

 

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

 

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

 

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう
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